いきもの深夜便
ヘビは飼いやすい。それでも売るには、噛まれても平気な顔が要った
ショップの話

ヘビは飼いやすい。それでも売るには、噛まれても平気な顔が要った

書いた人: 管理人(熱帯魚歴30年・元ショップ店員・元卸売業者)

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「見せてください」と言われたら

私が働いていたのは売り場の広い総合ペットショップで、ヘビを売っていたのはアクアコーナーの一角で、アルミラックを組んで人工芝を置き、その上にピタテキ(パネルヒーター)を置き、さらにその上にアクリルケースを横並びで5つほど並べていました。そのケースの前でお客さんが足を止めたのです。しばらく眺めてから、こちらを振り向いて言います。

「見せてください」

私は「はい」と答えて、ケースを開けました。コーンスネークでもカリフォルニアキングでもセイブシシバナでも、ヘビは手に取って見てもらうのがいちばん早いのです。

ヘビはハンドリングを重ねれば人に慣れる生き物ですが、慣れるまでは結構噛みます。ケースから出した次の瞬間に、がぶりと来ることもありました。

それでも私の顔は変わってはいけません。噛まれても涼しい顔をして、「いつもこうですよ。でも慣れてきました」と言わんばかりに、ヘビを持ち続けるのです。売るためには、そうするしかありませんでした。

もちろん、内心は「痛いーーー」です。

飼いやすいのに、飼えない人が多かった

ヘビは本当は、いたって飼いやすい生き物です。それなのに、買うのを諦める人が多くいました。

ひとつの理由は餌が冷凍マウスであることでした。ただ、話をしてみると、人が諦める本当の理由は餌よりも家族の反対のほうが大きく、とくに多かったのは奥さんの反対です。

選べる数が、売れ行きを決めていた

売る側として、もうひとつ分かったことがあります。当時は、今のようにボールパイソンの色柄が豊富な時代ではなく、コーンスネークやキングスネークは、同じ種類でも1匹ずつ顔も柄も違うところが、選ぶ楽しさでした。

だから数が揃っているうちは、お客さんは選ぶのが楽しくて、ポンポンと売れます。ところが残りが2〜3匹になったとたん売れ行きがぴたりと止まってしまうのです。選べなくなれば、欲しくもならないのでしょう。

それに気づいてからは、売り切る前に次を仕入れて、常に棚を回すようにしました。業者のところには大量にいるので、仕入れに行けばつい余計に買ってしまうのですが、その話は「入荷リストが届くのが、楽しみだった」に書いています。

新入荷が大好きなお客さんと、奥さんの大目玉

お客さんのなかには、一定数、新入荷が大好きな人がいました。飼ったことのない生き物はとにかく飼ってみたい、一通り触ってみたい、という人たちで、小動物でも鳥でも熱帯魚でも、なんでもありでした。実は私も同じ口で、休みの日はショップ巡りをして、お客さんと情報交換をしていたくらいですから、気持ちはよく分かります。

ちょうどヒョウモントカゲモドキが手に入りやすくなってきた時代で、そういう人たちは、もれなくそれも買っていきました。買った日は、みんな嬉しそうでした。当時はハイイエローがようやく出回りはじめたころで、ハイポタンジェリンもいたかもしれません。いちばん新しいのは、スノーホワイトなど白い系統だったように記憶しています。

ところが餌がコオロギなので、家族を説得するのにめちゃくちゃ苦労していたのです。それでもなんとか説得して、飼うところまでこぎつけました。

そこで勢いづいたのが、そんなお客さんのひとりです。ヒョウモントカゲモドキの次は、ヘビだ、と言い出しました。

場所は、店のなかです。その日は奥さんも一緒に来ていて、奥さんの雷は、ヘビの話が出た瞬間に落ちました。

「それは違うやろ!ええ加減にしいよ!」

お客さんはタジタジです。大目玉をくらったのは、そのお客さんだけではありません。私まで、一緒に叱られました。

あとから聞いた話です。そのお客さんは、私が一緒に奥さんを説得してくれることを期待していたそうです。私の前でなら、奥さんもそこまで怒らないだろうと思っていたらしく、ところが家に帰ってから、そんな考えまで見透かされてしまったといいます。

一緒に叱られた私はといえば、ヘビに噛まれたときと同じで、顔には出しませんでした。内心では笑っていました。今度は、痛くて、ではありません。

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