いきもの深夜便
混泳は、魚種より個体差。餌場のいい場所は、毎月、持ち主が変わる
熱帯魚

混泳は、魚種より個体差。餌場のいい場所は、毎月、持ち主が変わる

書いた人: 管理人(熱帯魚歴30年・元ショップ店員・元卸売業者)

「混泳って、相性表のとおりでいいんですか?」

カウンターで、お客さんが、飼育書を開いたまま、聞いてきました。

「この本に、相性表がのってるんですけど、これのとおりに入れたら、大丈夫ですか?」

「だいたいは、そうです。ただ、水槽の中は、本のとおりには、いかないこともありますよ」

そう答えながら、私は、自分の水槽の朝のことを、思い出していました。餌をひとつまみ落とすと、水槽の中の空気が、ふっと変わります。それまで、てんでばらばらに泳いでいた魚たちが、いっせいに水面近くへ集まってくる。そして、そのなかで、いちばん餌が落ちてくる、いい位置を、さっと取る魚が、いつも決まっています。

私の水槽では、いま、アノマロクロミス・トーマシーと、ブルーデンプシーと、パキスタンローチが、同じ45cm水槽で暮らしています。ところが、その「いちばんいい位置」を取る魚は、ひと月たつと、入れ替わっていることがあるのです。

先に結論

  • 混泳がうまくいくかどうかは、魚の種類よりも、個体差のほうが大きいと、私は感じています。
  • 魚は成長するので、水槽の中の立場も、時間とともに変わります。
  • 餌場のいちばんいい位置を取る魚は、毎月のように、入れ替わります。

現在の45cm水槽の顔ぶれ

いま、私の45cm水槽には、ブルーデンプシー、アノマロクロミス・トーマシー、パキスタンローチが、いっしょに入っています。種類だけで見ると、相性が合うかどうか、はらはらする組み合わせに見えるかもしれません。それでも、日々の様子を見ていると、決め手になるのは、魚種ではなく、その一匹一匹の性格だと、実感させられます。

混泳は、魚種の相性表では決まらない

混泳の相性は、図鑑や飼育書にも書いてあります。それはそれで、大きな目安になりますが、実際の水槽では、同じ種類でも、おとなしい個体と、気の強い個体が、必ずいます。ですから、相性表の「○」を信じて入れても、うまくいかないことがありますし、逆に、「△」でも、何も起きないことがあります。

さらに、魚は成長します。小さいときは、いちばん下の立場だった魚が、大きくなったとたん、水槽の中心に立つことも珍しくありません。そのたびに、水槽の中の力関係が、少しずつ入れ替わっていきます。

毎月入れ替わる、餌場の席

その力関係が、いちばんはっきり表れるのが、餌の時間です。餌場のいちばんいい位置に陣取る魚は、ひと月たつと、別の魚に代わっていることがあります。先月まで、堂々とその席に座っていた魚が、今月は、水槽の端のほうに追いやられている。そんな入れ替わりを、毎朝、水槽の前で眺めているのが、私は好きです。

水槽の中にも、小さな社会があるのだと思います。魚をただ「飼う」のではなく、魚どうしの様子を見ることこそが、混泳水槽のいちばんの楽しみです。