点滴法を、私がやらない理由。ショップでも卸でも使わなかった水合わせの話
「ほかの店では、点滴でやってましたよ」
袋に入れた魚を渡したあとで、お客さんが、ふと思い出したように言いました。
「そういえば、ほかの店では、点滴でやるって言われたんですけど」
「ああ、点滴法ですね。うちでは、やらないんです」
私が、そう答えると、お客さんは、少し困ったような顔になります。正しいと信じて調べてきたことを、目の前の店員が、あっさりと否定したのですから、無理もありません。それでも私は、理由を、きちんと説明することにしていました。
先に結論
- 点滴法は、時間がかかるわりに、効果が薄いので、私はやりません。
- 水槽の外でやるため、袋の中の水温が、かなり下がってしまうのが、いちばんの問題です。
- 使うのは、淡水エイのような、本当に神経質な魚だけです。
点滴法とは
点滴法は、魚の入った袋やバケツに、水槽の水を、チューブでぽたぽたと、少しずつ落としていく水合わせの方法です。時間をかけて、水質の違いを、ゆっくりならしていくことが目的で、丁寧な水合わせの代表として、よく紹介されます。
それでも、私がやらない理由
理由は、大きく2つあります。ひとつは、時間がかかるわりに、効果が薄いことです。もうひとつは、水槽の外で行うので、袋の中の水の温度が、どんどん下がってしまうことです。魚にとって、水質のわずかな違いより、水温の急な変化のほうが、よほど負担になります。せっかく丁寧にやっているつもりが、水温を下げてしまっては、本末転倒です。
自宅でやる場合の手順も、私には、少し馬鹿げて見えます。袋を水槽に浮かべて、水温をそろえたあと、わざわざ、袋を水槽より低い場所に置き直して、点滴を始めるのですから。水温をそろえた意味が、そこで半分、消えてしまいます。
ショップでも卸でも、私は、点滴法を使いませんでした。総合ペットショップのなかには、たまに、やっている店もありましたが、少なくとも、私が働いていた現場では、必要のない手間でした。
私のやり方
私のやり方は、いたって簡単です。袋ごと水槽に浮かべて、水温がそろったら、袋の口をあけて、水槽の水を、適当に足します。袋が、ぷかっと浮いたまま、魚は、水槽の様子をうかがいながら、自分のペースで、外へ出ていきます。水に慣れていく速さを、魚自身に決めさせるのです。自然界の暮らしに、いちばん近い形だと思っています。くわしくは、「熱帯魚の水合わせは、水質より水温。元ショップ店員が教える、失敗しない始め方」に書いています。
それでも、点滴法を使う魚
ただし、例外はあります。淡水エイのような、本当に神経質な魚は、時間をかけて、丁寧に水合わせをします。こうした魚には、点滴法も、立派な選択肢になります。迷ったときは、普通の魚にはやらず、神経質な魚にだけ使う、と覚えておくと、失敗が少なくなります。